ほっと安らぐコーヒータイムのお供に|オススメ本《魔女たちは眠りを守る》

魔女たちは眠りを守る

ご自宅での安らぎのコーヒータイムに、そしてカフェでほっと一息つきたい時に、優しくて心が温まる小説はいかがですか?

今日は、村山早紀先生の小説《魔女たちは眠りを守る》をご紹介します。

魔法や奇跡が起こる街「風早の街」が舞台の、現代を生きる魔女が出てくるファンタジー小説です。

村山早紀先生は、MAYAが子どものころから大好きな作家さんです。

どれくらい好きだったかというと、一番好きだった小説を枕元に置いて寝るくらい大好きでした。

子どものころって、夜中に火事が起こったり大地震が起こったり、ということを真剣に心配しませんでしたか?

小さいころの私はそんな夜中の災害を怖がって、何かあった時に両手に抱き締めて逃げられるように、と大好きな本を枕元に置いていました。

(ちなみに一番好きな小説とは、「魔法少女マリリンシリーズ第3巻 地下迷宮の冒険」です。今は新品では手に入らないかなと思います)

魔法少女マリリン 地下迷宮の冒険

以前は子ども向けの小説を中心に書かれていて、「児童文学作家」として大活躍していた村山早紀先生ですが、今は一般文芸も多く執筆されています。

今日ご紹介する《魔女たちは眠りを守る》も、大人向けの本として読み応えのある文体で物語が描かれています。

かつての児童文学時代と変わらない、ひとへの愛情に満ちた優しいまなざしで切り取った物語は、年代も性別も問わず、思わず涙してしまうほどの名作揃い。

現代のライトな文芸を読み慣れた方には少し「読みづらい」と思われてしまうこともある文体ですが、その分じっくりと噛み締めるように、時間をかけて読み進めていくことができます。

時間に追い立てられるように過ごす現代の私たちに、ゆったりと流れる時間を味わわせてくれるこの本。

《魔女たちは眠りを守る》を読みながら、ほっと安らぐコーヒータイムを過ごしてみませんか?

著:村山 早紀
¥1,584 (2022/11/09 20:50時点 | Amazon調べ)

※このエントリは、《魔女たちは眠りを守る》のネタバレを含みます。ネタバレが苦手な方は、あらすじだけ確認してUターンすることを推奨します。


目次
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《魔女たちは眠りを守る》は、心優しい魔女たちの目線から、ひとの営みを見守る物語

魔女はすべてを覚えている。
ひとの子がすべてを忘れても。どこか遠い空の彼方へ、魂が去って行こうとも。
そして地上で魔女たちは、懐かしい夢を見る。記憶を抱いて、生きてゆく。

その街は古い港町。
桜の花びらが舞う季節に、若い魔女の娘が帰ってきた。
赤毛の長い髪をなびかせ、かたわらに金色の瞳をした使い魔の黒猫を連れて。
名前は、七竈・マリー・七瀬。
目指すは、ひとの子たちが「魔女の家」と呼ぶ、銀髪の美しい魔女二コラのカフェバー。

懸命に生きて、死んでゆくひとの子と、長い時を生きる魔女たちの出会いと別れの物語。

KADOKAWAオフィシャルサイト

《魔女たちは眠りを守る》の舞台となるのは、風早の街という架空の街。

風早の街は、作者の村山早紀先生が、長年描き続けてきた不思議が起こる街です。

複数の出版社、様々なシリーズを跨がって描かれてきた、風早の街。

他の本を読んでいなくても、どの物語から入っていっても単独で読むことはできるのですが、もし他の本を読んだことがあれば、物語同士のリンクにニヤリとできちゃいます。

  • たとえばある物語では「願い事の叶うコンビニ」があったり。
  • またある物語では「本を修復する魔女のお屋敷」があったり。
  • また別の物語では、「妖怪の住むホテル」があったり……。

街のひとたちは、噂で不思議なできごとを聞いたことがあったり、実は過去に不思議に遭遇したことがあったり。

だからこの街では、不思議なことが起こることもある、と魔法や奇跡に対して受け容れる素地のようなものがあります。

この街では、ひとじゃない存在に対してもみんなが優しくしてくれるんだ。

殺伐としたことも多い現代日本。心が疲れてしまうことって、ありませんか?

そんな時に、風早の優しい空気に触れると、自分を優しく包み込んでくれるみたいで、ほっと息を吐くことができるのです。


《魔女たちは眠りを守る》には、二人の魔女が出てきます。

  1. 七瀬――10代後半の見た目をした若い魔女。世界を旅してきて、今ひとときだけ、風早の街で羽を休めようとしている。
  2. ニコラ――上品なおばあさん、という印象の美しい魔女。《魔女の家》という、1階はカフェ、2階以上は魔女の暮らすアパートメント(ホテル?)を営んでいる。

七瀬がメインの主人公ですが、ニコラも重要人物で、彼女に視点が向けられた物語も収録されています。

二人とも魔女ですからとても長生きで、人間とは時間の流れ方が異なります。

まだ若い七瀬ですら400年以上の時を生きていて、悲しい別れも何度も経験しています。

長生きの彼女たちは、きっとひとと関わるのをやめたいと思ったこともあるでしょう。

それでも、いつか別れなければいけないと知りつつも人間の傍らで生きている彼女たちは、何を想っているのでしょうね。

短い人生を懸命に生きるひとの子を、魔女は優しく見守って、時にそっと手を差し伸べてくれます。

けっして派手な魔法ではありませんが、誰かの背中をそっと後押ししてあげるような、優しくて心強い魔法です。

魔女たちの目線を通して見るひとの子の営みはなぜだか無性にいとおしくて、そんな人間の一人である自分の人生も、愛すべきものだというような気がしてくるのです。


《魔女たちは眠りを守る》の内容は?

それでは、七瀬とニコラ、二人の魔女を巡る短編集となっている《魔女たちは眠りを守る》に収録されているお話を紹介しましょう。

  • 第1話 遠い約束

物語の主人公は、書店員の叶絵。大好きな本に囲まれ一生懸命働いてきたけれど、人生に疲れてしまった様子。そんな彼女は高校時代、不思議なクラスメイトと出会っていた。

かつて青春の短い時間を共にした、人間の叶絵と魔女の七瀬の、優しい再会の物語。

  • 第2話 天使の微笑み

魔女は互いに深くを語らない……はずなのだが、その日のニコラは少し様子が違っていた。シチューを作りすぎた、と招かれた七瀬が聞いたのは、ニコラの友人であった魔女のお話。

魔女は寿命を迎えると、光になって消えてしまい、あとには何も残らない

けれど、友人であった魔女が命を賭して守った少年は、彼女の痕跡を残してくれて――。死んだあとに残るものについて、考えさせられる感動の物語。

  • 第3話 雨のおとぎ話

風早とは少し離れた街のハンバーガーショップでアルバイトをする大学生の男の子。彼は小さい頃の一時期、風早に住む祖母の家の世話になっていた。

久しぶりに祖母の家を訪れたが、祖母は具合を悪くしていて――。

かつて祖母から聞いた《魔女の家》を半信半疑で探しに行く男の子。不思議を信じる気持ちと、魔女がひとへ向ける愛情が起こした小さな奇跡の物語。

  • 第4話 月の裏側

本が好きな七瀬は、子ども向けに私的に本を貸し出す「文庫」を訪れていた。かつては街にたくさんあったという「文庫」も、今はほとんどなくなってしまっている。

なくなったのは文庫だけではない。子ども達のために、と続けられていたはずの商店街の祭りは、もう開催されなくなってしまった。

愛したものが、魔女の時間感覚ではあっという間に失われてしまう。

寂しさを感じる七瀬と、「文庫」の主人、佐藤さんが語ってくれた、子どものころに出会った不思議な存在との夏の物語。

  • 第5話 サンライズ・サンセット

時期はお盆。《魔女の家》で店を守るニコラは、彼岸から風早の街に帰ってくるたくさんの魂の存在を感じていた。タクシーの運転手さん、仲良しだった猫、野球少年だった男の子。

皆それぞれ生前には優しい物語を抱え、愛する人が彼らを思い出し祈ってくれている。

寿命が違うから、どうしても見送る側ばかりになってしまう魔女のニコラは、寂しさを覚えてしまうけれど、そんな彼女にもお盆の奇跡が訪れて――。刹那の再会に泣いてしまう物語。

  • 第6話 ある人形の物語

時は第二次世界大戦まっただ中。主人公は、かつてアメリカから友好の証として送られ、今では敵国を想像させる物として捨てられてしまった可愛らしい西洋人形。

不思議な奇跡により動けるようになった人形の彼女と、疎開してきた女の子の出会いと別れ。女の子の遺志を継ぎ、人形は長い長い旅に出て――。

旅の終わりは、現代の風早。ハロウィンの夜に七瀬と人形は出会い、長い時を経て、人形の彼女と女の子の魂は救われる。不思議な救済の物語。

  • エピローグ 貝の十字架

風早の街でクリスマスを迎えた七瀬。手には貝殻を埋め込み作った十字架が。彼女が思い出すのは、かつて日本で、キリスト教が禁忌とされた時代に生きた人々のこと。

生まれ故郷のことを忘れ、救ってあげられなかった後悔は、その後幾度人間を救ってきても、七瀬の心を苛んでいる。

そんな彼女の元にも、クリスマスの小さな奇跡が起こる。魔女の抱える寂しさが少しだけれど昇華され、明日からを希望を持って生きていけるようになる物語。


この本と一緒に飲みたいコーヒーは

《魔女たちは眠りを守る》のほっと温かく優しいお話たちには、丁寧に淹れた紅茶やコーヒーがよく合います。

コーヒーなら、こっくりした深煎りに、お好みでミルクを入れるとまるで魔女たちが人間に向けてくれる愛情のように、優しく包み込むような味になるでしょう。

喫茶店で読書をするなら、少しお洒落にウインナーコーヒーなんかも良いかもしれませんね。

でも、外で読む時は一つだけ気を付けてください。後半のお話は、泣けてくるものばかりですので。


家でコーヒーを淹れて読むなら、MORIHICO.の「森の雫」がオススメです。

中深煎りのこのコーヒーは、深い苦みと豆本来の甘みが感じられる、森彦本店限定でしか手に入らなかった、特別なブレンドです。(現在はオンラインストアで購入できるようになりました)

ネルでドリップをすれば、お店で飲む味わいに。ミルクにももちろんよく合いますよ。


最後には思わず泣いてしまう。生きとし生けるものが愛おしくなる物語

ひととは寿命の違う魔女たちは、人間たちと一緒に暮らすことは出来ません。

ひっそりと隠れて住み、時に関わった人間の記憶を消すこともあります。

出会った人間の記憶には残らず、世界の陰の部分に暮らし、そして命を終える時は光となって消えてしまう。

自分たちより寿命の短い人間たちと、必ず訪れる別れについて、そして自分の命が尽きた後は何も残らないことについて、七瀬もニコラも、寂しさを抱えています。魔女の抱える寂しさが、この本の裏テーマのように物語に横たわっています。

この寂しさは、魔女特有のものなのでしょうか?

私はそうは思いません。

人間だって同じです。

例えば、ペットを飼っている人はどうでしょうか。

自分より寿命の短い愛する家族と、いつか別れなければならないことについて、不安や悲しさを感じない人は居ないでしょう。

何度も家族を見送った人も、中には居るかもしれません。

命が尽きた後だって同じです。確かに人は魔女と違い、骨やお墓は残りますけれど、「自分」という存在を、未来に渡ってどれほどの人が覚えてくれているでしょう?

だから、《魔女たちは眠りを守る》を読みながら、七瀬やニコラについ語りかけたくなる慰めの言葉は、そのまま自分自身への慰めになるのです。

そして、この寂しさを抱えているのは、自分の周りのひとびとだってきっと同じです。

七瀬達の抱える寂しさに「大丈夫だよ」「生きていることに意味はあるんだよ」「自分が為したことは、必ず未来に影響を残すんだよ」なんて話しかけながら一冊を読み切ると、心の中に、優しい言葉がこんもりと積もっています。

自分に、そして他人に、優しくしてあげられる言葉たちです。


作中で七瀬やニコラが手助けをしてあげるひとびとは、みんな一生懸命に生きている善良なひとたちです。

彼ら、彼女らの優しさや懸命さ、大切に人生を生きている姿(きっと二人の魔女が彼らの様子をそう感じているから、読み手もそう感じるのでしょう)を見ると、人生や命が愛おしくなります

ひとの営みに対して優しい視線を投げかける。人生を慈しむ。そんな本が《魔女たちは眠りを守る》です

心優しい魔女が、あなたの街の夜も、眠らずに守ってくれているかも。

そんな不思議なことを、信じてみませんか? 信じていれば、魔女たちが魔法で隠した秘密の路地に、足を踏み入れることが出来るかもしれません。

著:村山 早紀
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