パナマのエスメラルダ農園をご存知ですか?
コーヒー通の間では伝説のコーヒーとして有名な、そしてコーヒー業界人の中では知らない人はいない、世界一のコーヒーを生み出した農園なのです。
今日はちょっとマニアックに、そんなパナマ・エスメラルダ農園のゲイシャ ナチュラルを飲んだ感想を語り尽くそうと思います。
購入したお店は大好きな珈琲きゃろっとさん。
私がコーヒーにハマったきっかけのお店で、一年に一度だけ、エスメラルダのスペシャルロットのゲイシャを取り扱っているのです。
今日の記事はマニアックだから、ついてこれる人だけついてきてね!
超マニアックですけど、許してください。
パナマ・エスメラルダ農園のゲイシャ種は何がすごいの?
そもそも「ゲイシャ種」とは、コーヒーの品種のひとつです。
普段缶コーヒーやインスタントコーヒーを飲んでいる方だと、コーヒーの品種を意識をすることもあまりないかと思います。
けれど、スペシャルティーコーヒーの世界では、品種によってもコーヒーのフレーバーが大きく異なります。
よく聞く品種は
- ティピカ種
- ブルボン種
- カトゥーラ種
- カトゥアイ種
- パカマラ種
- ゲイシャ種
などの他に、世界各地にその土地その土地の在来種があったり、突然変異や品種改良によって、新しい品種が生み出されたりしています。
たくさんの品種があるんだねぇ。
お米も、「あきたこまち」や「ほしのゆめ」などたくさんありますよね。それと似たようなものだと思ってください。
今回私が飲んだ「ゲイシャ種」というのは、今や世界中で大人気の高級品種です。
「ゲイシャ種」だからというだけでブランド価値のようなものがついてしまって、「本来の価値以上に高値で取引されている」という批判がされるくらい、人気が大爆発しています。
私が今回買ったコーヒー豆も、値段はなんと100gで5,980円。
「たっか……」ってなりますよね。
私も「たっか……」ってなりながら買いました(笑)
でも、パナマ・エスメラルダ農園のゲイシャ種は、それだけの価値がある、世界の中でもほんっとうにすごいコーヒーなんです。
何がすごいの?
それをここからじっくりご説明しましょう。
ゲイシャ種の起源とは? ゲイシャ種の不遇の歴史
ゲイシャ種は、元々はコーヒーの生まれた地、エチオピアにあった品種でした。
エチオピア南部のゲシャ村というところが起源と言われていて、この「ゲシャ」の発音が変化して「ゲイシャ」と呼ばれるようになったと言われています。
現在では、このように「ゲシャ」という表記をするロースタリーもありますね。
⇒参考:GESHARY COFFEE – ゲシャリーコーヒー
ゲイシャ種はエチオピアからコスタリカやパナマなど、さまざまな国に持ち込まれました。
けれどその当時はコーヒーを大量生産する時代。質よりも量を重視していたので、育てるのが大変なゲイシャ種は注目されることはなく、壊滅状態となりました。
病気に弱く、栽培が難しく、収穫量が極端に少ない
⇒つまり、大量生産をよしとする当時の時代背景には合わなかった!
とにかく量を作りたい生産者にとっては、ゲイシャ種は論外だったんだね。
ゲイシャ種には見向きもされなかった時代があったために、ほとんどが姿を消してしまい、現在は貴重な品種になっています。
しかしやがて、コーヒーを品質で評価する時代がやってきます。
スペシャルティーコーヒーの時代です。
ここからゲイシャ種の怒濤の巻き返しが始まるのです。
広告エスメラルダ農園の伝説。品評会「ベスト・オブ・パナマ」
品質の良いコーヒーを見つけ、オークションにかけるために、世界ではコーヒーの品評会が行われています。
時は2004年。
カップオブエクセレンスと並ぶ世界最高峰の国際品評会、「ベスト・オブ・パナマ」でのできごとです。
パナマのエスメラルダ農園が、ゲイシャ種のコーヒーをこの「ベスト・オブ・パナマ」に出品したところ、当時の最高落札価格で優勝したのです。
これがエスメラルダ農園の伝説のはじまりです。
エスメラルダ農園のゲイシャ種の快進撃は2004年に留まらず、
- 2004年のベスト・オブ・パナマ → 優勝
- 2005年のベスト・オブ・パナマ → 優勝
- 2006年のベスト・オブ・パナマ → 優勝
- 2007年のベスト・オブ・パナマ → 優勝
毎年1位を獲得するようになってしまい、エスメラルダ農園はもはや殿堂入り。
2008年からは「ベスト・オブ・パナマ」の特別枠として、「エスメラルダスペシャル」という農園独自のオークションが開催されるようになりました。
国際品評会でひとつの農園のオークションをやるって意味がわからないですよね!(褒めてる)
「どんだけ!?」ってくらいすごいことなんです、これ。
特別も特別、別格も別格の扱いなんです。
コーヒーは農産物です。その年によって、おいしくできたり失敗してしまったり、本当ならば味が揺れ動く……はずなのですが、エスメラルダ農園のゲイシャ種は、毎年毎年、ベスト・オブ・パナマで優勝してしまうくらいの高品質。
品質が高すぎて意味がわからない。(褒めてる)
このエスメラルダ農園の快進撃によって、「とてつもなくおいしいコーヒー」として世界でもゲイシャ種が注目されるようになりました。
一度は絶滅しかかったゲイシャ種の復活劇、感動しちゃうね。
今では世界で一番人気のある品種なんですよ。
珈琲きゃろっとのエスメラルダ農園ゲイシャ ナチュラルを飲んでみた
私が愛飲しているスペシャルティーコーヒー専門店のひとつ、珈琲きゃろっと
今年は
- パナマ・エスメラルダ農園ゲイシャ ナチュラル
- コスタリカ・プエンテタラス ナチュラル
- エスメラルダ農園&プエンテタラス飲み比べセット
2種類の高級コーヒーと、世界最高峰のコーヒーを飲み比べられる特別なセットの3種類が販売されました。
一年間頑張った自分へのご褒美に。
そしてめったに味わえない特別なコーヒーだから、こういうときだけは。
そんな気持ちで、特別なセットを購入しました。
セットだと少しお安くなって、2袋で8,500円でした。(高い……)
まずは大本命、エスメラルダ農園ゲイシャ ナチュラルを飲んでみます。
珈琲きゃろっとのエスメラルダ農園ゲイシャ種の、2つのすごいところ
エスメラルダ農園ゲイシャ種を飲む前に、ちょっとだけ語らせてください。
珈琲きゃろっと
それは、コーヒーの精製方法が「ナチュラル精製」というところ。
コーヒーの精製方法はいくつかあって、国によって行われている精製方法も異なります。
今回珈琲きゃろっと
私もまだまだ勉強中なのであまり偉そうに語れないのですが、ナチュラル精製って難しくて、手間暇がかかるんです。
普通はどんな精製方法なの?
ウォッシュドプロセスという精製方法を取られることが、エスメラルダ農園だと多いみたいです。
ウォッシュドプロセスだと、コーヒーを収穫したあとは果肉を取り除いて、水槽で種の周りの粘着質(パーチメント)を除去し、水洗いしたあとに乾燥させます。
一方で、ナチュラル精製では、収穫したコーヒーの果肉がついたまま乾燥させます。
果肉がついたまま乾燥させることでコクや甘みが生み出されるのですが、失敗をすると異臭や発酵臭がしてしまうので、これが難しいのです。
ただでさえゲイシャ種は育てるのが難しいのに、さらにナチュラル精製の手間をかけてもらえるなんて……!
個人的にナチュラルの豆の方が甘くて好きなので、とってもありがたいです。
珈琲きゃろっと
毎年国際オークションで大人気のエスメラルダ農園・ゲイシャを、珈琲きゃろっとで販売するために、「LEON地区」という特別ロットで用意してもらえている。
これって世界中でもすごい特別扱いなんだよ。
実は珈琲きゃろっと
ところが2018年には、エスメラルダ農園の大幅な減産により、オークションは高騰。
泣く泣く販売を見送ったのです。
そんな経緯があって、2019年1月に焙煎士の内倉さんはパナマへ渡航。エスメラルダ農園を訪問しました。
長年きゃろっとでエスメラルダ農園のゲイシャを販売してきて、お客さんにとても好評だということをお話しした結果、特別ロットを用意してもらえるようになりました。
それが「LEON地区」です。
コーヒーが冷めてもフレーバーが消えないどころか、飲み終わった後のコーヒーカップからもオレンジのようなフレーバーが感じられるほどの高品質なコーヒーです。美しく広がるシトラスフレーバー。ナチュラルらしいストロベリーのような香りも感じます。
とのカッピングコメント。
最高のコーヒーだということが、読むだけでも伝わってきます。
広告パナマ・エスメラルダ農園ゲイシャ ナチュラルを飲んでみた
見てください、エスメラルダ農園ゲイシャのコーヒー豆を。
粒があまりにも綺麗に揃っています。
こんなに大きさの揃った豆を見ることなんて、めったにありません。
見ているだけで質の高いハンドピックがされているのがわかるけれど、匂いを嗅いでもばっちりわかるよ。
袋を開けて鼻を突っ込むと、ベリー系の甘酸っぱい香りが。
コーヒーの香ばしい香りとは一線を画す、浅煎りのスペシャルティーコーヒーらしい華やかな果実みを感じられました。
絶対においしいコーヒーを淹れるんだ! と気合いを入れて、コーヒーミルを掃除してから淹れてみました。
コーヒーミルは何度も使っていると、微粉が溜まって雑味の原因になっちゃうんだ。
定期的に掃除をすると、おいしいコーヒーを飲めますよ。
珈琲きゃろっとのパナマ・エスメラルダ農園ゲイシャ ナチュラルを飲んだ感想
非の打ち所がない高品質なコーヒーです。
一口飲むと「ふわわわぁ~」と思わずうっとりしてしまうくらい、舌の上に複雑で繊細な味わいが広がります。
まるでたくさんのお花と果実が同時に舌の上で踊り出したみたい。
鼻に抜けていく香りがとても豊かで、けれど匂いがきついわけではない、とても自然な感じ。
近年アナエロビックなどの特殊プロセスで独特の香味をつけているコーヒーがありますが、それらと比べると、このゲイシャ種ナチュラルはとてもオーソドックスなスペシャルティーコーヒー。
オレンジやみかんのような甘みの強い酸と、華やかな香りが正統派のスペシャルティーコーヒーという印象を抱かせます。
酸味も甘みも一種類ではなくて、色とりどりのフルーツが載った大皿を口の中で味わっているみたい。
柔らかくてお上品で、繊細な味わいを感じました。まるで良いところの貴族のお嬢さんみたいな味です。
ナチュラル精製なので、ベリー系の味わいも感じます。
嫌な発酵臭は感じないので、ナチュラルが苦手な方でもすっと飲めると思います。
もっと上手に淹れられたら……と自分の技術の未熟さがとても悔しくなる、ポテンシャルを秘めに秘めた、どこまででもおいしくなるコーヒーです。
「コーヒーらしくない」と「スペシャルティーコーヒーらしい」を両立させた神がかったコーヒー。
お値段が高いので、大切に大切に飲ませていただきました。
今回珈琲きゃろっと
とても優しい味で、すっごくすっごくおいしくて、生産者さんの汗と涙が感じられたんです。
ここまでおいしいコーヒーを作るには、どれだけの努力が費やされてきたんだろう?
コーヒーが自分のカップに注がれるまでの物語をもっともっと知りたい。
生産者さんを、現地の人たちをもっともっと支援したい。
そんな気持ちがふつふつと湧いてきました。
大切に作られたコーヒーだってことが伝わってくる味だったんだね。
コーヒーにまつわる物語は、決して華やかなものばかりではありません。
発展途上国で生産されて、先進国で消費される。そこには経済格差という大きな溝があります。
高品質なスペシャルティーコーヒーが注目される現代ですが、地球温暖化によって、こういった高品質なコーヒーの栽培に適した土地は、どんどん狭くなっています。
これらの問題を知りながら「コーヒーを楽しむ」と言ってしまうと不謹慎というか、なんだか「違う」ような気がして、どう表現したら良いのかわからないのですが……。
どうにか言葉を絞り出すとするならば、「もっとコーヒーを愛したい」です。
- コーヒーのおいしさをもっと味わいたい。
- コーヒーの奥深さをもっと知りたい。
- コーヒーの抱える問題についてだって理解したい。
- コーヒーと共に生きる人々と深くつながりたい。
エスメラルダ農園のゲイシャを飲んで、コーヒーについても深く考え込んでしまいました。
それくらい、気持ちを揺さぶるコーヒーでした。
みなさんは、感動したコーヒーのエピソードはありますか?
ツイッターへのリプライも、ブログへのコメントも歓迎しています。ぜひ良かったら、あなたのコーヒーエピソードも聞かせてください。
楽しみにお待ちしていますね。
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