完全数を冠したスペシャルティーコーヒー専門店
休日にモーニングを食べたくて探したスペシャルティーコーヒー専門店がここ、COFFEE STAND 28だった。
最寄り駅は南郷18丁目。「じゃあどうして28なんだろう?」と疑問を抱いたが最後、この店に惹き付けられる。
疑問の答えと共に、COFFEE STAND28の魅力も知ってほしい。
店名の由来
初めて訪れたその日は、外出したことを後悔するほどの大雪だった。
JR新札幌駅周辺は、空から大地までが白く煙る降雪。そこから地下鉄東西線に乗り換え、3駅先の南郷18丁目まで。駅に降り立てば幸いにも雪は止んだものの、次に襲いかかるのは骨まで凍るような痛いほどの寒さ。
半泣きで震えながら辿り着いた店内は優しく暖かくて――わざわざ来た甲斐があった。訪れた人にそう思わせてくれるだけのコーヒーが、COFFEE STAND 28にはあった。
店名に冠する28という数字は、店主の名前の由来となった名投手、「江夏 豊」投手の阪神タイガース時代の背番号だったそう。
そしてその背番号にまつわるとある名台詞が、小川洋子さんの小説「博士の愛した数式」に登場する。
「28の約数を足すと28になる。完全数だ。デカルトはね、完全な人間がめったにいないように完全数もまた稀だといっている。この数千年に見つかった完全数の数は、30個にも満たないんだよ。完全数28は、阪神タイガースのエース、江夏豊の背番号なんだ。」
とても稀である完全数のように稀にみる素敵なお店にしたい、と語る店主の思いは、お店のホームページでも熱く語られている。
お得すぎるモーニングセット
朝食に嬉しい軽食メニューは、チーズトーストとサンドイッチ。事前に調べたホームページのメニューでは、どちらも320円と書かれていた。
カフェの軽食が320円で食べられるなんて安いな、と思いレジカウンターで注文しようとしたら、なんと11時まではモーニングセットを実施していると言うではないか。
ただでさえお手頃価格な軽食メニューが、コーヒーとセットでたったワンコイン、500円から。お得!
ああ食後には絶対デザートを頼もう、と内心で決意しながら、まずはサンドイッチとドリップコーヒーのMサイズを注文する。サンドイッチのセットだと、値段は550円だった。コーヒーのサイズ変更やカフェラテへの変更でも値段が変わるので、メニューを確認して注文してほしい。
シンプルな白いマグになみなみと注がれたコーヒーと、溶けたチーズが食欲をそそる、軽くトーストされたサンドイッチ。具材はハムにレタス、そしてトマトと間違いのない組み合わせだ。
店員の女性に訊いてみれば「サンドイッチはどのコーヒーとも合いますよ」と安心する言葉をいただけたので、合わせるコーヒーは浅煎りのケニアを頼んでみた。
冷えた手をマグカップで温めながら香りを嗅ぎ、そしてようやく一口。身体が喜ぶ美味しさだった。あつあつのコーヒーは火傷をしないくらいの温度で飲みやすく、咥内に広がる味わいは、第一印象に酸味が来て、それから甘みが訪れる。ケニアのコーヒーは馴染みが薄かったのだが、あまりに美味しくてびっくりした。
コーヒーにハマりたての人が、もっとコーヒーを好きになれる。誰かの”入り口”になれるようなコーヒーだと感じた。
コーヒーに夢中になっている意識を剥がし、続いてサンドイッチへ。
軽くトーストされたパンはほんのり温かくてふわふわと柔らかく、噛み締めれば具材の塩気が広がる。
チーズの上に振られたブラックペッパーが口内を刺激し、このスパイシーさがコーヒーの力強さを引き立てる。
自家焙煎の、焼いてから一番美味しい時に飲むことができる店だからだろうか。余計な雑味の無い澄んだコーヒーは、目覚めのエネルギーをもたらし、それと同時に安らぎも与えてくれる。魔法のような満足感を味わった。
女性一人でも居心地の良い店内の様子
人心地がついたところで、じっくりと店内の様子も見てみよう。
店のドアを開けた時に真っ先に目に入るのが、正面にある大きな焙煎機。
お洒落なポストカードや雑誌の置かれたカウンターの向こうでは、コーヒーを淹れたりフードを用意してくれる店員さん。
お土産にはドリップバッグが3種類のほか、一部焼き菓子もテイクアウトが可能なようだ。コーヒー器具もいくつか販売されていて、カフェで見る器具はどうしてひときわ魅力的に見えるのかと、いつも不思議に思う。
スペシャルティーコーヒーやコーヒーへの愛が感じられる内装に、ゆったりと座れるテーブル席も奥にいくつか。一人で訪れたお客さんが座りやすいカウンター席は、ゆったりと席が6つ。カウンター席の椅子は少し大きくて、女性ならハンドバッグを乗せて座っても余裕があるのが嬉しいところ。
静かな店内に囁くようなBGMが心地良い、ぼんやりと落ち着くことができる空間だ。
コーヒーとペアリングできるスイーツも複数
COFFEE STAND 28は、コーヒーと焼き菓子のペアリングを楽しめることでも有名だ。
定番のチョコブラウニーやクッキーのほか、気まぐれメニューのタルトやチーズケーキなど、日によって提供されるものが異なる。明日は何のスイーツがあるのだろう、とお店のインスタグラムを見るのも楽しい。
せっかくなので「本日の気まぐれ」のデコポンの焼きタルトと、グアテマラの中煎りを合わせてみる。
柑橘系のタルトとの間違いのない組み合わせは浅煎りのコーヒーなのだが、先程浅煎りを飲んだので、次は中煎りか深煎りも飲んでみたい。悩んでいた私に、店員さんがグアテマラにも柑橘系の風味があるから合うだろう、と教えてくれた。
運ばれてきたグアテマラも、やはり美味しかった。きちんと苦みがあり、甘みと素朴な……ナッツ感、とでも言うのだろうか。「あぁ、これが自然の恵みなんだな」という思いが湧き上がってきた。
焼きタルトのスパイシーな焦げ部分と、グアテマラの苦味が引き立てあっていて、この組み合わせもとても美味しい。
店主の山口さんにドリップの様子を見せていただいたのだが、たとえばこのグアテマラなら92℃で淹れるそう。熱すぎず、けれど飲むと冷えた身体がぽかぽかと温まるちょうどいいコーヒーの温度は、豆によってベストを探す、こだわりある温度管理の賜物のようだった。
スタンプカードが貯まるのが嬉しい
COFFEE STAND 28にはスタンプカードもあった。
ドリップコーヒー1杯、コーヒー豆100g、またはドリップバッグ5個ごとにスタンプ1つが付き、6つ貯まるとドリップコーヒー1杯無料またはコーヒー豆10%増量のお得なサービスだ。
コーヒーを飲んで、ついでに豆を購入していたらあっという間に貯まってしまいそう。一度だけでなく、二度三度とリピートしたくなる店だ。
店内入り口すぐにはサイクルラックがあり、何故か冬でも自転車が一台。
駐車場は台数が限られているものの自転車は数台置けそうなので、近隣ならば、サイクリングの際に通えばスタンプも貯まり、健康にもなりそうだ。